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能登の塩の味


母の父方の祖父は、石川県の能登の出身。
能登では塩田で働いていたが、とても厳しい労働だったため、北海道に移住したのだと聞いていた。
曾祖父にはあったことはないけれど、自分の先祖に塩をつくっていた人がいた、ということはずっと心に残っていた。

先日、たばこと塩の博物館の学芸員の方の、塩についてのレクチャーを聞く機会があった。
その中で、世界農業遺産として、能登で1軒だけ製塩を続けている一家が紹介された。
70kG近くの海水を桶にいれてかつぎ、浜と塩田を1日何十往復もする。
なるほど、これは大変な労働だと納得した。

もう少し能登の製塩のことを知りたいと思い、たばこと塩の博物館に行ってみた。

展示室では、先日では見られなかった古い塩づくりの映像を観ることができた。
浜からくんできた海水は、塩田の真ん中にある「しこけ」と呼ばれる大きな桶に溜められる。
そこから、「おちょけ」と呼ばれる、底のすぼまった細長い桶に海水を組んでまく。
その、海水をまく姿を真上からとらえた映像。

美しく弧を描いて、砂の上にまき広げられる海水。何度くり返されてもその弧は乱れることがない。
重力に抗って、海水をかつぐ姿とは異なる、軽やかでのびやかな姿と、放たれる海水。
たとえ軽やかに見えようが、重労働なのだとわかっているけれども、その美しさにみとれてしまう。

帰りに、ミュージアムショップで能登の塩を買ってみる。
なめてみると、ぐっと鋭い味がした。一瞬、汗の味を連想する。
いつか、この塩をつかった料理を、母につくってあげよう。