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物語を食べる


今は、世界各国の塩が手に入る。
私は、基本的にはシチリアの塩を使い、サラダなど塩をそのまま食べる時には、フランスのカマルグの塩を使い、和食の時には赤穂の粗塩を使う。

ただ、塩の味というのは、結局のところは無機物である塩化ナトリウムの味。
つまり、世界中どこの塩も同じ味なのだ。

ただ、味の感じ方に影響を与えるものはある。
ひとつは形状。多くは結晶化までの時間の長さや状況によって形状が異なり、それによって溶け方が変わり、感じる味が変わる。
もうひとつは製法。製法によって、どの程度にがり(塩化ナトリウム以外のカリウムや、マグネシウムなど)を含むかが変わり、使い方によっては味の違いを感じられるものもある。

たばこと塩の博物館の学芸員の方に、その地域でとれる地域の塩が、その地域の郷土料理に合うという合理性って何かあると思いますか?と聞いてみたら、味の観点からいったらないと思います、と言って、上に書いたようなことを説明してくれた。

でもね、物語の観点ならあると思いますよ、とにっこり笑った。
そう、私たちは物語も食べている。