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恥をかかせてもらう機会


昨日は、月に一度通っている、茶事講習会の日。
茶事とは、亭主が客をもてなす、いわばフルコース。懐石、主菓子をお出しする初座、濃茶、薄茶をお出しする後座で構成される。
茶事講習会では、参加者がそれぞれ、亭主、客、水屋(裏方)役になって、茶事をとりおこなう。

通い始めて半年が過ぎ、この講習会の意味が、これまでとは違った形で見えてきた。
それは、恥をかかせてもらえる機会なんだな、ということ。

鶴子先生から「私は日々、人様のお胸をかりて恥をかかせて頂いているんです」という言葉を初めて聞いた時、本当に衝撃を受けた。
73歳の、請け負った茶事は1000回を超える出張茶事料理人の口からさらりとでるこの言葉。

最初は、そんなことを言える鶴子先生を、特別な人のように感じていた。
しかし、徐々に、茶事講習会は鶴子先生が私たちに提供してくれている「人様のお胸を借りて、恥をかかせてもらう」機会なのだ、と気づくようになった。
そして、それが、どれだけ希有な場なのかということも。

本気で恥をかける場は、恥をかくことの価値を、心底信じている人にしかつくれない。
本気で学ぶ場は、自分自身が永遠に未熟であることを、心底受け入れている人にしかつくれない。

そういう人がつくる、そういう場を体験させてもらえて、本当に良かったなと思う。

誰かをもてなすということに、完璧なんてありえない。
それは、気を抜くと甘えにもなることだけど、そうはしないのは本人の覚悟だけ。
でも、その事実は受け入れる。
その上で、全力を尽くす。
至らないところがあれば全力でリカバリーする。
だけれど、完璧はない以上、失敗はある。
だから、恥をかく。申し訳ないけれど、かかせてもらう。
でも、そこから深く学んで、次に生かす。
そうやって、続けていくしかない。
人間なんて、本当に不完全なものだから。

そんなことが、恥ずかしながら、この歳になってようやくわかるようになりました。
でも、わかったらなんだか勇気がでてきた。