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私の焦点距離

昨晩ふと、自分は、料理をつくる相手(人間)に対しても、素材である食材(動物、植物)に対しても、どちらも区別なく、それがどこで生まれて、どんな風に生きてきて、どんな個性を持っているのか、考えていることに気づいた。

そこで思い出したのがトワイラ・サープという振付家の「クリエイティブな習慣」という本に書かれていた「焦点距離」のこと。他のあらゆる性質と同じように創造性にも傾向があって、そのひとつはどのような焦点距離で世界を観るか、というところに現れる、という話。例えば、アンセル・アダムスは限りなく遠くから世界を見つめることを定められた写真家だし、レイモンド・チャンドラーはクローズアップを重ねていく作家。

私は、ずっとクローズアップの人間だと思ってきた。自分が撮る写真を並べてみれば明白で、とにかく寄りの写真が多い。ただ、昨日の発見で、クローズアップ(近さ)とともに、うまい表現がみつからないけれど、深さというか時空間的な長さという焦点距離も、自分の特性としてあるんだなということに気づいた。

確かに、私の場合、関係する対象の過去を知ることができずに、そこから何かを生みだしていく時には、失敗することが多い。きちんと過去を知った上で、生みだしていく時には、大抵うまくいく。そこまで知らなくてもいいんじゃない?、と言われることもあるけれど、多分、私はそこに焦点を合わせないと、世界がよく見えないんだと思う。だから、私にとっては必要不可欠。

これからは、「近く」「深く」という焦点距離にもっと自覚的になろう。