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水無月の茶事(花あそび)

月1回通っている茶事実習会の備忘録。
人をもてなすとはどういうことか、和食とは何か、を学ぶために通っています。
今回は、裏方担当。

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席入りの前に、花あそびをする。
先生が準備してくださった花々は、花屋さんでは見られないものばかり。
苗を手にいれるたびに、知人の庭で育ててもらっているのだと言う。
たくさんの花がいちどきに咲く時期だからこその、贅沢なあそび。
それぞれ好きな花入れを選び、好きな花を選び、活けていく。
花を活けることも、料理をつくることも、ともに景色をつくることだと気づく。

汁は、もろこしかのこの合わせ味噌仕立て。
とうもろこしは、実の芯が甘いので、できるだけ根元からほぐす。
海老と白身魚のすり身はあくまで、芯。
とにかく、美しい姿になるように、表面にとうもろこしを埋込んでいく。
とても、繊細でやわらかい手の使いかた。

向付は、梅雨鯵の叩き。
鯵はこの時期が最も美味。
夏蜜柑と長芋、生姜、かいわれに加減醤油で。
鯵と夏蜜柑は最高の組み合わせ。
まさに季節の出会いもの。
加減醤油には少し蒸しているからと、白梅酢も加える。
先生は、白梅酢を得るためだけでも、梅を漬ける価値があると言う。
向付に、特に萩焼などの陶器を使う場合は、使う前からしっかり水につけ、使ったあともしっかり水につけ、完全に乾かしてから、しまうことが大事と。
水のおかげで生臭さを吸わない。

煮物椀は水無月豆腐。
水無月と言えば、ういろうに小豆の和菓子を思い浮かべるけれど、料理でもよく使う。
刺身湯葉と豆乳を葛仕立てに。小豆のかわりには枝豆を。
三角の形は氷のかけらを表している。
前盛は椎茸と糸瓜。
白と緑、茶と薄黄色。
吸い口はへぎ柚子。この時期の青柚子は固い。だからへいで使う。
そして、いつもの吸地のあたりの話。
これは、いつか別にまとめよう。

焼物は鱧のつけ焼き。
鱧をさばきと骨きりを初めてみる。
獰猛な歯。生きているものには、よく長靴を噛み切られるという。
皮も固くて、なかなか串刺しが難しい。
つけ焼きのたれは、鱧の旨味を邪魔しない程度の控えめに。
茶事では、常に強すぎる味を避ける。
すべては一杯の濃茶のためのものだから。

預け鉢は、南瓜と帆立貝柱のべっこう餡。
黒皮南瓜は日本かぼちゃの一種。
しっかりとしたくびれ、ねっとりした身質が特徴。
ただ、今回は手に入らず普通の南瓜で。
南瓜を蒸し煮するときは、出汁ではなく水のほうが美味しい。
煮汁は、いも類と同じく、しっかり甘いほうが美味しい。

進肴は、じゅんさいの酢のもの。
じゅんさいは、この時期が旬。
Tサイズと言われる、葉部分が1cm程度の極小のものが最高級品。
これまで食べた大きいものとは、葉とゼリー質のバランスが全然違う。
なまこは、両端を切り、箸にガーゼをはさみ、中を掃除するとよい。

ハ寸は、鮎の風干しと紫陽花ずんだ。
鮎を三枚におろして、軽く干して、炭火であぶる。
塩焼きとはまた異なる、凝縮した風味。
紫陽花ずんだは、庭の紫陽花の枝をそのまま使う。
葉の付け根に、紫陽花が咲いているかのように、ずんだと白玉の花をさかせる。
ずんだは、西京味噌と砂糖を調味。

箸洗いは、グミの実。
先生の庭の樹から。
その時にしか出会えないものこそが、ご馳走。

香の物は、水茄子と糠漬け。
暑くなるにつれて、漬け物は冷たく冷やし、量も多めに。
水茄子は、金属を嫌うので、手で割く。

主菓子は青楓。
練り切りは、季節的にそろそろ終わり。
半夏生を模した、緑と白のグラデーション。

干菓子は村雨。
小豆餡とみじん粉、上南粉を混ぜ、重石をして乾かしたもの。
とても簡単。
主菓子や干菓子は、銘店のものを取り寄せるのも、ひとつのもてなし。
ただ、たとえシンプルなものでも、つくりたてというのも、またもてなし。