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とうもろこし豆腐

茶事の実習会で、とうもろこしの葛豆腐の煮物椀を担当する。
葛を使いこなせるようになりたくて、吉野の本葛を買ってあるのに、まだ葛湯以外に使えていない。

やはり料理は一度やったかどうかが分かれ目だ。
一度やってしまえば、どうしてこんな簡単なことやらなかったんだろう、と思うものも多い。
だから、一度担当してみたかった。

白くて、ゴツゴツした小石のような葛を、水出汁で溶かす。
すりおろしたとうもろこしの汁と水出汁を加えて、シノワで濾す。
鍋を火にかけ、30分、木べらで練り上げる。
かき混ぜるのではなく、練り上げるので、実際のところ、ほとんど鍋を叩くような激しさである。
先生のお手本で、目指すところは理解できても、身体がついていかない。一瞬で腕が痛くなる。
右手で、左手で、もうひとりの右手、左手で。なんとか30分、焦げ付かせず、ダマにせず、練り上げた。

冷やし固めたできあがりは、私にとっては十分うっとりする滑らかさと喉越しだったのだけど、先生は一口食べて、最高級の葛を使って、こんなんでは全然ダメと言う。
先生は、空気も味のひとつ、とよく言うけれど、練りが甘くて、その空気が足りないのだ。

とはいえ、露胡瓜(きゅうりの絞り汁を加えた)の吸い地も、付け合わせも、すべてを冷たく冷やした煮物椀はとても涼やかで、文月の懐石のメインディッシュにふさわしい料理。30分練り上げるだけの価値はある。

ようやく葛料理、はじめられるかな。